染め物屋
でんでん太鼓の音がする。
その音を聞いて「染め物屋がきたわ」とヌチャナートが言うのだが、俺には何のことか分からなかった。
「染め物屋」なんてタイ語は俺の辞書にまだ入っていないからだ。
ポーが何かを言うと、全員が大声で笑った。
きょとんとしている俺を見てヌチャナートが別の言葉で言い換えた。
「あなたの頭を染め物屋・・・・」
何をいい、何が可笑しいのかさっぱり分からない。
「聞いてご覧なさい」
自転車に乗った男がでんでん太鼓を鳴らしながらやってきた。
俺はでんでん太鼓が珍しいのだと思った。
「日本にもあるよ。子供の玩具だよ」
俺が勘違いしているのにヌチャナートは気づいた。
ヌチャナートは「染め物屋」と言うタイ語を一生懸命に説明してくれた。
最近は説明の仕方が上手くなり、説明が分かりやすくなった。
「染め物屋なのよ。汚れた衣類を黒く染めてくれるのよ」
「ふーん」
「色は黒だけよ」
自転車には石油缶ほどの火のついたコンロを積んでいた。
古く色褪せた衣類を黒い染料につけてコンロで加熱して染めるのだ。
そこまで理解してから始めてポーが言った冗談の意味が分かった。
ポーは白髪が増えた俺の頭を染め物屋に染めて貰えと言ったのだ。
2007/4/5
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