プラケム 塩漬けの魚
いつだったか鯵が馬鹿安だった。
ヌチャナートはこの時とばかり鯵を大量に買い込んだ。
それを塩漬けにしておいた。
漬け上がった当時は「美味い、美味い!」と言って塩漬けの鯵を食べていたが、やがて飽きがきた。
塩漬けにした鯵があることすら忘れていた。
熱帯の国で魚を保存する方法をそのまま日本で行っている。
常温においていても絶対に腐るはずがない。
ヌチャナートは食べ物を無駄にしないから、ここはヌチャナートにまかせておけばいい。
何かを油で揚げていた。
換気扇を回して油の臭いを追い出す。
「できたわよ!味見して!」
テーブルの上には魚の唐揚が乗っている。
魚には唐辛子や、小さな紫色の玉ねぎ、ニンニクの薄切りが乗っている。
これって、日本で言う「南蛮漬け」の原型だな。
魚をちょっと摘んで味見した。
塩っぱいが、塩漬けされているうちに出来上がった旨味がたっぷりある。
「これはよくできた!美味いね、ヌー。」
ヌチャナートがにこっと笑う。
習慣というものはなかなか抜けないものだ。
俺は魚を摘んでは食べて、それからご飯を食べる。
別にどうということがないと思うだろう。
日本人にはごく普通の魚の食べ方なのだ。
しかしこんな食べ方はヌチャナートには奇妙な食べ方なのだ。
俺の食べ方に文句をつける。
今日のご飯は餅米でなくて普通の日本のご飯だ。
餅米の場合は餅米を指で丸めて、魚に押し付ける。
そうすると魚の旨味が餅米に浸み込む。
普通のご飯の場合は食べ方がちょっと違う。
「魚をご飯に乗せて食べるものよ」
あるいは、ご飯の上で魚の身をほぐして、魚とご飯をまぶして一緒に食べる。
ここが日本人とタイ人の魚の食べ方の違いなんだ。
俺がタイ人に化けてもこんな小さなことから、日本人とばれてしまう。
2007/6/4
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