旨そうなにおい
夕方、ヌチャナートと歩いていた。ちょっと小腹がすく時間帯だ。
近所の家から天ぷらそばのにおいが漂ってきた。
「旨そうだなー」と俺は思った。
冷凍庫にかき揚げがあるのを思い出した。
家に戻ると、俺は冷凍庫からかき揚げを取り出した。
すぐに食べたいからそばつゆの中にいれて解凍した。
俺が台所でごそごそやっているのでヌチャナートが話しかけた。
「あら、何を作っているの?」
「天麩羅を食べるんだ。」
「素麺が冷蔵庫に入っているわ」
「ああ、そうだったね」
かき揚げなんて久しぶりに食う味だ。
かき揚げを食いながらヌチャナートに聞いた。
「なんで俺が天麩羅を食うのかわかる?」
「わかんないわ、なんで?」
「歩いている時、天麩羅そばのにおいがしたんだ。
それで天麩羅が食いたくなったんだ」
「ふーん・・・・」
同じ臭いを同じ時に嗅いだ。
俺はその臭いから俺の大好きな天麩羅そばだとわかった。
それで天麩羅が食いたくなってしまった。
俺とは反対にヌチャナートには天ぷらそばのにおいは馴染みがない。
駅の立ち食い蕎麦から漂う天ぷらそばのにおいはなんども嗅いでいる
が、ヌチャナートは天ぷらそばを食べない。
食べないからにおいと食欲が結びつかない。
それだけではなく、そんなにおいがあったことすら覚えていない。
俺とヌチャナートがタイの町を歩いていたならどうだろう。
例えばスターアニスのにおいがよく漂ってくる。
俺はあのにおいに食欲をそそられないが、ヌチャナートは
「ああ、お腹がすいた」と感じるにおいなのだろう。
自分が今までに体験してきたにおいによって食欲が刺激されるかどうか
決まるのだ。
2008・7・14
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