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2008年12月18日 (木)

本当のおこげ

昔は飯を鉄釜で炊いた。釜で飯を炊くにはちょっとしたコツがある。
始めは弱火で段々強火にする。釜の上には木製の重い蓋を載せ
る。「始めチョロチョロ、中パッパ、赤子泣いても蓋とるな」と言って
この蓋は絶対にとってはいけない。
火加減が強すぎると、釜の底全体に分厚いおこげができる。
真っ黒に焦げたら、飯にも焦げ臭が移り飯がまずくなる。
ほんのちょっとだけおこげが出来た飯は美味しい。
この薄茶色のおこげを釜の底から剥がし取り、醤油をかけて食べる。
おこげの香ばしさと醤油の旨味が調和してなんとも言えない旨さが
ある。電気釜で飯を炊く昨今では、おこげを食べたくとも食べること
ができない。

電気釜が普及し、お釜で飯を炊く人がいなくなった頃の話だ。
その当時の電気釜の技術者はおこげになる釜は不出来の釜で、
おこげを作らず最後の一粒までふっくら炊き上げるのが上出来の
釜、それを作るのが技術と考えていた。
まだマイコン炊飯器なんてなかった。
「あたしンチは◎◎の電気釜だから美味しくご飯が炊けるよ」
なんて自慢する奴がいた。
「そのお釜はおこげができるかい?」
まだその頃はおこげの美味しさを知っている人がいた。
「できないわ」ちょっと残念そうな顔をする。
「そうか、俺ンチはオランダ製の電気釜だから、ちゃんとおこげが
できるんだぜ」
「へぇー」オランダ製の電気釜なんてあるわけない。
それでも騙される奴がいた。

タイの料理について調べていた。
そのなかに「おこげ」という言葉が出てきた。
随分久しくそんな言葉を聞いていない。なんだか懐かしくなった。
俺はおこげと聞くと分厚い鉄釜の底にできた茶色に焦げた飯を
想像する。

ヌチャナートと行ったタイの料理店でおこげ料理なんて食べたこと
がない。不思議に思い、もう少し調べると、日本人がおこげと言って
いるのは、俺たちが子供の頃にポン煎餅と言っているものに近い
ことがわかった。ポン煎餅って知らないかな?
米に熱を加える。円板の密室内で膨張した米はお互いにくっついて
煎餅になる。膨張する時にポンと大きな音を出すのでポン煎餅と
呼んでいた。
電気釜の飯を食って育った世代はおこげを知らない。
ポン煎餅のような物をタイで見てそれをおこげと勘違いしたのだと
分かった。

アジア系の外国人が買物に来る商店街に行った。
一軒の店におこげと書いた看板があった。
当然、俺は鉄釜の底に貼り付いたおこげを想像した。
「おかしいな?おこげをわざわざ作って商売になるの?」
おこげのサンプルが置いてある。それは煎餅のような薄いもの
だった。日本のお菓子で言えば煎餅型「おこし」だ。
「ああ、これがウエブで見た、おこげだな」と推定した。
さっそくそれを求めた。ついでにおこげの汁だかおこげのタレという
のも一緒に求めた。

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ヌチャナートに買って来た所謂おこげを見せたが、
「そんなもの、知らない」と言う。どうやらヌチャナートが育った田舎
では所謂おこげを食べる習慣がないようだ。
一枚の所謂おこげを手にとって味見した。
砂糖のない、甘くないおこしと思えばいい。これだけを食べても旨い。
おこげの汁だかタレという物は汁が多い八宝菜のようなものだ。
それをおこげにかけて食べた。正しい食べ方はこの汁のなかで
おこげを煮るのかもしれない。
でもかけた方が美味しそうだと思った。
「中国人の食べ物よね」ヌチャナートは見ただけで全く興味を示さ
ない。中国式の味でタイの味ではない。まとまったいい味だが、
唐辛子の刺激がないと物足りない。俺は唐辛子を加えた。
俺ですら唐辛子を加えるのだから、タイの料理屋で食うおこげ料理
も辛いタレだろうと想像した。

都会に近い所ではタイでも電気釜が普及しているが、まだまだ薪や
木炭で飯を炊く人々が多い。そうすると当然のようにおこげができる。
おこげの話をしたら、ヌチャナートもおこげの美味しさを知っていた。
「おこげをどうやって食べるんだい?」
「お塩をかけて食べるのよ。美味しいわよ」目を細めている。
「日本人は醤油をかけて食べるよ。ナムプラをかけないの?」
「かけないわ。塩だけよ」
あの香ばしいおこげをタイ人も美味しいと言っている。
熱々のおこげに塩を振っただけでも美味しいだろうな。

今日の結論は
電気釜で育った世代の日本人はおこげを知らないことが分かった。
ウエブで言うおこげはタイのある地域、特定の人々が食べることも
分かった。
鍋の底に焦げ付いたおこげをタイ人も美味しいというのがわかった。
俺が知っているタイ料理はヌチャナートが作ってくれる物と注文して
くれるものだけだ。ヌチャナートが知らない、作らない、注文しない
料理がまだまだ沢山あるのがわかった。
食の好みは時代と地域によって異なるのだと痛感した。

最近のマイコン炊飯器ではおこげも作れるらしいな。
おこげを食べるためにわざわざ鍋でご飯を炊く人が出てきても
おかしくない。なんだか、おこげを食べたくなった。

不景気になって流行はグルメブームからB級グルメに移った。
リストラされるとB級グルメの店にもいけなくなる。
家で旨い物を食おうか?
と言っても河豚の刺身やサーロインは高すぎるから駄目。
米ならある。これで美味しいおこげを作って食べる。
いつも同じ色と硬さのこだわりのおこげを作るのは難しい。
美味しいおこげの作り方とその技術を競うのもか面白いかもしれない。

2008/12/15


TREview

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