旧市街を取囲んでいる堀がある。人力と象で戦った昔は堀や城壁を作って町を守ることができた。その堀の戦略的意味が薄れた現在では堀は水のある静かな光景を作っている。町は水の浄化に取り組んでいるが、堀にゴミを捨てる町民が多く、水は汚れている。ゴミが浮き、アオコが発生している。それを汚いと誰も感じていないようだ。
その堀で信じられない光景を見た。
堀の水を使って鍋を洗っているおばさんがいる。姿から見て屋台で食べ物を売っているおばさんと分かる。路上にある屋台から真直ぐ堀に降りると鍋を洗っているおばさんの位置になる。屋台には誰もいない。間違いなくおばさんは屋台の主だ。しばらく待っていると、おばさんは屋台に戻ってきた。
あんな汚い水で洗った鍋で食べ物を作り、客にだしているのだ。
「おばさんの脇に綺麗な水が入ったバケツがある」「鍋を洗った水を堀にすてているだけだ」とおばさんに好意的な見方をしよう。そんなことの為に重い水バケツを堀まで運ぶか?路上で鍋を洗い、汚水を道路わきの下水に捨てるほうが簡単だ。バケツは明らかに堀の水を汲むためのものだ。
タイで腹を壊す観光客が多い。
ツアーで一流料理店で食事をしていても腹を壊す。
一流料理店の衛生管理は優れているとしよう。
(俺はそんなことを信じていない。衛生という思想がないのだから、やはり一流料理店の裏側も非衛生的だと思っている。)
衛生管理が行き届いている店で食事をしていても、腹を壊す。それは唐辛子の刺激に腹が耐えられないからだ。
冒険のつもりで観光客が屋台で食事をする。
そうすると運悪くこのおばさんの屋台で食事をするかもしれない。
堀で洗った直後の鍋で作った料理を出されたなら間違いなく腹を壊す。
運よく、先客がいてバイキンや洗剤などを先に食べてくれたなら腹を壊さないかもしれない。
衛生観念がないことは重々承知していた。
まさか食べ物を売って生計を立てている人が、汚れた堀の水で食器を洗うとは夢にも思っていなかった。飽きれて開いた口が塞がらなかった。
2009/2/28
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