« 盗まれない現金 | トップページ | ガティ ココナッツミルク »

2009年3月 8日 (日)

シェンチュン 長春薬酒

タイにシェンチュンという黒い酒があると聞いていた。これは試飲の
価値がある。是非、試そうと思っていた。
シェンチュンを試飲したいと言うとタイ人は軽蔑したような顔つきに
なる。タイ人はタイの酒に興味を持ち、試飲したいという外国人を
「バッカじゃない」という顔で見る。
日本で外国人が「球磨酎」を飲みたいと言ったら、日本人はその
外国人に驚く。こんな物まで興味をもってくれる外国人に日本人は
一種の尊敬の念を持つ。
ホテルのバーでスコッチを飲んでいるなら、タイ人は尊敬する。
スコッチなら世界中、何処でも同じ味を味わえる。
タイでしか飲めない酒を飲むから、タイに来る意味がある。
その点をタイ人は理解できない。

シェンチュンについてタイ人に聞いてみた。
「シェンチュンなら何処にでもあるよ」それに勇気付けられ店を
回った。
大型スーパーや小奇麗なコンビニには置いてない。
どうやらシェンチュンは小汚い店にしかないらしいことに気づいた。
あるコンビニでは「薬屋に行って、薬草を買ってきて自分で作るのだ」
と教えられた。まあ、俺のタイ語でそのように解釈した。
手に入らないとなると、シェンチュンという酒は幻の酒に思えてきた。

しょうがない、自分で作るしかないのか?漢方薬屋に行くか?
薬屋に行き「シェンチュンを試したいのだけど」と言った。
その店の老婆が親切に教えてくれた。
俺は老婆のタイ語がよくわからない。おおよそは分かるが、俺の
理解が正しいかどうか迷いがある。
「こっちにいらっしゃい。」老婆は店の外に俺を連れ出した。
「あそこにサムローやトクトクがいるでしょ。
あの前の店にシェンチュンはあるわよ」やっぱり、俺の理解で
ただしかったのだ。言われたとおりの店に行った。
そこは薬酒を飲ませる店だった。
「シェンチュンありますか?」
「あるよ」親父は瓶を取り上げた。茶色のビール瓶に赤いラベルが
貼ってある。ラベルには漢字で「長春薬酒」タイ文字でシェンチュン
と書いてある。この酒なら知っている。
俺がタイの養命酒と分類している ちょっと甘味のある強い酒だ。
「ちょっと試したいんだ」
親父はウイスキーグラスにシェンチュンを入れてくれた。
ウイスキーグラスは洗ったことがない。もうこのグラスで何百人もの
人が飲んでいる。グラスは手垢で汚れている。これがタイの生活で、
庶民の酒の飲み方なのだ。
強いシェンチュンをぐいっとあおる。親父が冷たい水をくれる。
喉が渇いているからまたその水をぐいっと飲む。

俺は日本人だから漢字を読むがタイ語は読まない。
読んだとしても漢字の次にタイ語を読む。
タイ文字が読めなかったから「長春」をタイ語では「シェンチュン」と
いうのだと知らなかっただけだ。
幻の酒に思えたシェンチュンが唯の酒に変わった一瞬だ。

また歩いて先ほどの薬屋の前に来た。親切な老婆がいた。
俺の姿を見て老婆が話しかけてきた。
「シェンチュン、わかりましたか?」
「ありがとう、分かりました。味見しましたよ。美味しい酒ですね」
あおったシェンチュンが効き始め、顔が火照るのを感じた。

必要もない時はよく目にする。目に付く。
それが必要になると、全然、目に付かなくなる。
この長春薬酒も同じだ。赤いラベルだから目立つ。
それなのに、探しているとみつからない。

2009/2/27

TREview

|

« 盗まれない現金 | トップページ | ガティ ココナッツミルク »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/68615/28527646

この記事へのトラックバック一覧です: シェンチュン 長春薬酒:

« 盗まれない現金 | トップページ | ガティ ココナッツミルク »