夕涼み
夕暮れになると昼間の暑さは何処かに消えた。
「今日は外で食事をしようか?」
「あらいいわね。花火もやりましょうよ。」
「ああ、いいね」
「冷たいビールを用意するわ」
今晩は食い過ぎないよう、控えめにしなくてはいけない。
料理を楽しむというより、夜風に当たりながら話を楽しむ食事だ。
こんな時は料理とか味なんて二の次、三の次だ。
酒のつまみに、その辺にある料理を持ち出した。
「いい風だね」
「涼しいわね」
乾季に訪れるタイの夜にそっくりだ。
こんな夜は風呂に入って、白い粉を体中にたたき付け、洗いざらしの
こざっぱりした服に着替える。子供は通りを走り回って遊ぶ。
大人は表で、ビールを飲む。誰もが表に出てくるので、近年の日本
では失われている、ご近所との交流の時間だ。
熱帯の夜を思い出しながら、二人でとりとめもない話を続ける。
猫のサダム・フセインも我々に加わる。サダムは植え込みの影に
隠れてこちらの様子を伺っている。
捕まえようとすると、尻尾を高くあげながらさっと逃げる。
追いかけるのを止めると、また同じ所に戻っている。
それが面白いようだ。
「ビールがなくなったから、ワインを飲む?」
「そうね」
いつもは冷やした白ワインをのむのだが、今晩は赤ワインが飲み
たくなった。赤ワインも美味いもんだと見直した。
線香花火の火がぱちぱちとはじける。
ヌチャナートは花火で遊びながら子供のように「綺麗だわ」と喜ん
でいた。
2009/7/26
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