カオパットアメリカンと言う料理がタイにある。その意味はアメリカ風焼飯だ。
「ヌチャナートはカオパットアメリカンを知っているかい?」
「知ってるわ。トマト味よ。美味しくないわ」
どうやらタイ人には受けない味らしいが、日本人や外国人には受け入れら
れている。
偶然に開いたサイトにカオパットアメリカンの記事があった。
カオパットアメリカンについて書いた日本人の記事を幾つか読むと、どの
記事もこの料理の何処がアメリカ風なのかわからないと書いてある。
サイトに掲載されている写真を見て、俺は「タイ人から見ればアメリカ風
だな」と感じた。俺の感覚が狂ってきているのもこの事実から分かる。
カオパットアメリカンと言うのはケチャップで味付けした焼飯、つまり鶏抜
きのチキンライスを思えばいい。その周囲に目玉焼、ソーセイジやトマトや
レタスなど飾りの野菜を乗せたものだ。
多くのタイ人は白人(タイ語でファラング)との接触がない。アメリカ人と
ヨーロッパ人の区別なんてつかないというより、ファラングはみんな同じだ
と思っている。
白人=ファラング=アメリカ人という公式ができていると理解しよう。
ケチャップはファラングの調味料だ。上の公式から見ると、ケチャップを使っ
た焼飯はアメリカ風だ。色だって普通のカオパットは茶色だが、このカオ
パットは赤だからアメリカ風になる。
ウインナーソーセイジはタイのソーセイジとは味付けが違う。
タイのソーセイジは豚腸を使うのに、ウインナーは羊腸を使うので形も違う。
味や形が違うからタイ人から見ると異国風つまりアメリカ風に見える。
目玉焼きもフライパンに少量の油を塗り、その上で卵を焼くアメリカ人の
焼き方だ。タイ人は大量の油のなかに卵を落として焼くので焼き上がりが違う。
俺たちが食べる目玉焼きの焼き方はアメリカ風焼き方だからこの卵焼きも
タイ人から見ると異国風な卵焼きなんだ。
屋台などで食べる普通のカオパットの場合、焼飯と一緒にでてくる野菜は
胡瓜と楔形に切ったライムだ。カオパットアメリカンは焼飯にトマトやレタスを
つけるからアメリカ風なんだ。
タイ人から見るアメリカ風料理というのは一昔前の日本人の洋食という観念
に似ている。今の日本人はアメリカ、フランス、イタリア料理などを区別して
いる。欧米の料理なら何でも洋食と言っていた時代があった。
タイ人が言うアメリカ風料理=かっての日本人が言う洋食と考えれば分かり
やすいのではないか?
ファラングが食べる料理に似せた焼飯だから、カオパットアメリカンとタイ人
は言うのだと俺は考察している。
マクドナルドやケンタッキー以外の純粋なアメリカ料理を知っている日本人
にもこの焼飯のどこがアメリカ風なのか分からないだろう。
この焼飯はアメリカとあんまり関係ないから無理もない。
どうしてこの焼飯がアメリカ風なのかはタイ人の頭の中を想像しなくては理解
できない。白人つまりファラングが食べるものは何でもアメリカ風にタイ人に
は見える。欧米人の料理に似せた焼飯、カオパットは立派なアメリカ風焼飯
にタイ人には見えるからカオパットアメリカンなのだ。
俺の目から見るとこれはタイ料理のスタイルではない。
でもタイにしかない料理だから俺はカオパットアメリカンをタイ料理と考える。
これを日本に入ってきた欧米料理の例で考えてみよう。ポークカツレツが
日本でトンカツになった。山盛りのキャベツと一緒にでるトンカツに日本独特
のとんかつソースをかけて箸で食べる料理を欧米人が見れば和食に見える。
それに似ている。カオパットアメリカンは立派なB級タイ料理だ。
「辛いタイ料理に耐えられなくなると、カオパットアメリカンを食べる」と言う
日本人は多いと思う。
2010/4/12
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