ルックチンプラ
俺が通り掛かると「ルックチンプラ」と女が叫んだ。
見ると、織物を織る時に使う道具のような形をした食い物を売っていた。
鯵や鰯のような魚から尾鰭を取り除いた形を想像すればいい。
この道具の名前をなんと言うのか忘れた。
確か、「とびひ」と言っていたと思った。糸の間を滑って左右に動く木製の
道具だ。名前を確認するためにネットで調べた。そうしたら、この道具の
写真と共に杼(ひ)と言う言葉があった。
杼(ひ)は飛ぶように動くから、「とびひ」とも言うのだろう。
俺の記憶もたいしたもんだ。織物にも繊維にも関係したことがないのに、
こんな道具の名前をどうして知っているのだ?
この食い物に今まで気づかなかった。名前とその形から魚の揚げ物だと
想像した。味見用に少々求めると、「とびひ」のような食い物を鋏で一口大
に切りわけてくれた。魚の肉が現れるのかと思ったのに、中から魚の身は
現れない。とにかく味見をした。魚のすり身を揚げたものだった。
一口にルックチンプラと言ってもいろいろな種類が有ることを知った。
似たような味が日本にもあるから、あまり違和感がない。
食い物を広げるとすぐに蠅が寄ってくる。タイらしい光景だ。
蠅に慣れっこになりたくないが、いちいち気にしていたら飯が食えないの
も事実だ。
2010/4/25
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