ドリアンの香り漂う
濃厚だと悪臭なのだが、それを薄めると芳香になる物質がある。
バスは小さな果物市場の脇を走る。色とりどりの熱帯の果物が山積みに
されている。果物の香りが漂ってきた。
甘ったるい美味しそうな香りだった。
「いい香りだ」俺は果物の芳香に酔っていた。
「ドリアンの香りよ」
ヌチャナートはこともなげに言うので俺は驚いた。
「あれっ?ドリアンってこんな芳香だったのか?」
確かに特徴あるドリアンの香りだ。
ドリアンの香りは強くて、好きな人は大好き、嫌いな人は大嫌いな香りだ。
俺はどっちだろう。好きでも嫌いでもない。嫌いに傾くかなという程度の
好みだ。果物市場にはドリアンが山積みにされているから、傍では強烈な
においがしているはずだ。その強いにおいのため、ドリアンの持ち込みを
禁止しているホテルもある。
市場の露店の周辺では強いにおいも、走っているバスの中でドリアンの
においを嗅ぐと芳香になってしまう。
強烈なにおいも薄めると芳香になるのは本当だとつくづく感じた。
2010年5月
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