野良猫と敗残兵
先回、インパールで敗れてビルマを抜けタイに逃げ込んだ日本の敗残兵が
タイの村人から食事を貰ったことを書いた。
公園でタイ料理の食事をしていた時のことだ。
腹を空かせた野良猫が食い物のにおいを嗅ぎ付けて傍に寄ってきた。
俺は小さな肉切れを野良猫に上げた。
相当腹をすかせていた様子の野良猫はすぐに肉切れに飛びついた。
その肉切れがタイ料理だなんて猫は知らないから、いつものようにくらい付
いた。今までに味わったことがない辛さに猫は驚いた。
いったん口に入れた肉を吐き出したが、空腹には勝てない。
その辛い肉をむしゃむしゃ食べ始めた。
食い終わると野良猫はもっと肉が欲しいというようにこっちを見ている。
もう一切れの肉を猫に与えた。今度は用心しながら肉を舐めた。
「食おうかな?どうしようかな?」と考えながら辛い肉を食い始めた。
三切れ目の肉を与えても「他に食うものがないから、これでも食うか」
という感じで肉を食っていた。食い終わると礼も言わずに立ち去った。
この時、食べ物もなく負傷した体でバンコックへ南下を続ける敗残兵のこと
を思い出した。補給が途絶えた敗残兵の食糧事情はこの野良猫と同じか
それ以下だっただろう。
辛いタイ料理を知らない、日本の敗残兵に村人は食べ物を差し出した。
腹ペコの敗残兵は夢中で辛い料理を食べた。
だが腹が満たされて来ると、辛さに気づき食べることが出来なかったのでは
ないだろうか?
野良猫と敗残兵を比較するのは失礼だし、お国の為に戦い傷ついた兵隊
さんには申し訳ないと思っていることを書いておく。
野良猫も飢餓状態の敗残兵も食い物に対する反応は似たようなものでは
ないかと感じてしまったんです。
飢餓とはどんな状態なのかを知らない者の推定ですので、ビルマ戦線で
戦った方や関係者はどうか怒らないでください。
2010/11/4
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