黄色い唐辛子
唐辛子にはいろいろな色がある。俺達がよく見る色は緑と赤だ。
園芸店に行くと成長に従って色が変わる唐辛子を鉢植えで売って
いる。ある時、そんな観賞用唐辛子を買った。
買う前に店の人に聞いた。
「この唐辛子は食べられますか?」
「食べるって聞いたことないですね。」
俺はその唐辛子は観賞用だと思っていた。
観賞用の唐辛子が少なくなっている。
「あれっ?ヌチャナート、唐辛子が少なくなっているね」
「あたしが食べたからよ」
「あれは観賞用だよ」
「食べられるわよ!」
どうやら観賞用唐辛子も食べられるらしいことをヌチャナートは自分
の体で証明した。
スーパーに黄色い唐辛子があった。
愛知県産と書いてある。そういえば愛知県の農家が世界で一番辛
いと言われている唐辛子を栽培していたな。その唐辛子の話はし
たかな?今日は黄色い唐辛子の話に限定しよう。
黄色い唐辛子なんてタイでは見ない。
唐辛子の消費が少ない日本では黄色い唐辛子なんて売れるもの
ではない。普通は珍しい品種は値段があがる。もともと売れそうも
ない黄色い唐辛子だから、値段も安い。ヌチャナートにとっても黄色
い唐辛子は珍しいのだろうか、ヌチャナートは笑いながら黄色い唐
辛子を持ってきた。
「ウチには生の唐辛子が沢山あるよ」
「ちょっと食べて見ましょうよ」
大量に買い込んだ唐辛子がやっと少なくなりよかったなと思ってい
た。それなのに、また黄色い生の唐辛子を買い込んだ。
黄色い唐辛子なんて色が違うだけで味も香りも赤唐辛子と同じだ
と思っていた。唐辛子にも先端が尖っているものと、尖っていない
ものがある。尖っているものは辛いと言われている。
黄色い唐辛子は先端が尖っている。
この唐辛子は辛い種類の唐辛子だろうと推定した。
いくら辛いと言っても国内でタイ人が栽培しているタイの唐辛子と
同じだろうと思った。俺はたかをくくって唐辛子を半分ほど齧った。
これが辛い唐辛子だった。タイ料理の辛さに慣れていない時だっ
たなら失神してしまうほど辛かった。
「どう?」
「辛いよ、味見してみるかい?」
ヌチャナートは舌先で唐辛子を舐めた。ちょっと考えてから
「辛いわね」と言う。唐辛子の辛さを見るには舌先で試すのだと初め
て知った。
俺がビールを飲んで転寝をしている間にヌチャナートはソムタムを
作って一人で食べていたようだ。
「あの唐辛子は辛いわよ!」
味見をしていたのに、ヌチャナートは黄色い唐辛子の辛さを忘れて
いた。一人前のソムタムに10本だか20本の唐辛子を加えたらしい。
一本の半分を食っただけでも辛いのに、10本も食ったらどのくらい
辛いか想像がつかない。
いくら辛い物が好きだと言っている日本人でも、この唐辛子を一本食
えないと思う。「辛い物に挑戦する」なんて意気込みでこの唐辛子が
10本入ったソムタム食おうとすると、ほぼ間違いなく敗退する。
2010/11/13
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