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2010年12月22日 (水)

タイ族の味の伝統

日本人には和食の味の伝統があるようにタイ人にも昔から伝えら
れた味の伝統がある。子供の頃に食べた味が脳にすりこまれ、
それが美味い味として記憶され代々受け継がれて行く。

スパゲッティと言う食べ物は近年になってタイに入り込んだ食べ
物だ。写真などでスパゲッティは見ているが、本物のイタリアの
味を多くのタイ人は知らない。
料理本などでスパゲッティをどうやって作るのか研究する人もいる
だろうが、そんな人は少ない。
多くの庶民は味の研究なんてする余裕がないからだ。
写真をみればトマトケチャップと肉を使うのが基本と分かる。
本物のスパゲッティを食ったことがないから、味は想像するしか
ない。タイ人が美味しいと思う味付になるのは当然だ。

以前、タイの田舎で食べた不味いスパゲッティの味について書いた。
目の前の鉄板でスパゲッティを作ってくれる。なんだか変な物を加え
ている。
「オイオイ、スパゲッティにはそんなもん入れんなよ!」
と思いつつ彼の動作を見ていた。
甘ったるくて不味いスパゲッティが出来てきた。
「こんなもんが売れるのか?」と周囲を見回すと、それを美味しそう
に食べている客がいる。
この味はタイ人の好みに合っているのだと理解した。

ヌチャナートが「スパゲッティを作ってあげるわ」と言い出した。
大丈夫かなと不安を感じながらも、どんな味になるのか楽しみだっ
た。スパゲッティなんてあまり食べることがないヌチャナートが作る
味だ。一応、イタリアの野菜ズッキーニなんて用意している。
見た目と形はスパゲッティらしきものになっている。
イタリアだって地方によってスパゲッティの食べ方や味が違う。
これがナポリ風なのか、ミラノ風なのか俺にはわからないが、イタ
リアの何処かではこのような食べ方をしているはずだ。
見かけは合格だ。

一口、スパゲッティを食ってみた。
「ああ、あの不味いタイのスパゲッティの味だ!」
「どう?」
「食べてごらん」
「あら、美味しいわね。よくできているわ」ヌチャナートは自画自賛し
ている。

スパゲッティをこのように甘口にすると美味しいと感じるのはタイ人
の伝統的な味覚、民族の味覚なんだと実感した。
本格的なイタリアの味をタイ人に食べさせても、伝統的な味の好み
から外れているのでタイ人はそれを美味しいと言わないだろう。
ケチャップに砂糖とナンプラとココナッツを加えると美味しくなるな
んて感じるだろうな。

昔から伝わっている味の好みを変化させるのは極めて難しいとい
うことをヌチャナートのスパゲッティから実感した。

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「タイのような低開発の国の人だから、スパゲッティの味がわかん
ないのよ!」
なんて思う人がいるだろう。それはとんでもない思い違いだ。
日本にだって鱈子スパゲッティとか刻んだ海苔を散らした和風スパ
ゲッティなんてものがある。俺達はそれを美味いと思って食うが、
外国人が気持ち悪いと感じても不思議はない。
あれは大和民族の味覚なんだ。
俺達だって西洋料理に醤油をかけて「美味くなった」なんて言って
いる。タイの不味いスパゲッティだって、タイ人にすれば「これが美
味しいスパゲッティの正しい食べ方なんだ!」となる。
民族ごとに味覚の差がある。その差を楽しまなくてはいけないと思
っているが、違うかな?

2010/12/20

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