タイの保存食
車掌が「次はウエノー」と停車駅の案内をした。
「上野なの?」
「そうだよ」
「市場へ行きましょうよ」
市場と言うのはアメ横のことだとすぐに分かった。
アメ横の雰囲気はタイの込み合う市場の雰囲気に似ている。
その雰囲気が気に入ったのか、食材が安く手に入るのが嬉しい
のか、タイの食材を買う楽しみなのか、理由はともかくヌチャナ
ートはアメ横が大好きなのだ。途中下車してアメ横に向かった。
日本の市場では手に入りにくい蛙、スッポン、ティラピア、ハーブ
などなどが並んでいる。豚肉の切り方も日本の切り方とは違う。
タイの市場で見るのと同じ、切り方をしている。
そんな形を見るだけでも俺には面白い。
ここへ来ると自分の国で食べている食材が手に入るのでいろいろ
な国の人がやって来る。タイ人、中国人だけでなくアフリカ人も何
かを買い込んで嬉しそうに笑っている。
「あら、これ安いわ」
「これ買いましょうよ」
「あっ、これちょうどなくなっているのよ」
「これでなになにすると美味しいのよ」
なんて言いながらいろいろな食材を買った。
ヌチャナートは欲しいものを買う役で、俺は運び屋役だ。
だんだんと荷物が重くなるが、ヌチャナートは無頓着に買物を続け
る。
家に帰ると、戦争だ。
冷凍保存ができるものをより分けて冷凍する。
加工保存する魚や肉は身を切り分けたり、塩を振ったりする。
ただ単に塩を振るのではなくニンニクを入れたり、飯を入れたりす
る。いろいろな保存方法を食材により使い分ける。
伝統的なタイの保存食を作る知恵があるからできる。
この保存方法にも地域差があるはずだ。
ウチの保存食はタイ東北部で行われている物だと思う。
スーパーで惣菜を買って食事をしている日本の主婦にはこんな事は
できない。昔の日本には漬物など保存食を作る知恵が伝承され
ていた。福島原発事故、東北大震災で安全な食品を保存する必
要性が見直されるのではないかな。
日本でも地方ごとに食材の違った保存方法がある。
伝統的な保存食を作ることは食生活を豊にすることにもつながる。
買い込んだタイの食材を使って、保存食を作るのを手伝いながら、
こんなことを考えていた。
2011/3/28
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