南瓜のタイカレー
「今度、南瓜をつかったタイカレーを作るわね」
「えっ?南瓜?」
「そう、南瓜よ。美味しいわよー」
南瓜を使ったカレーなんて聞いたことも考えたこともなかった。
俺は南瓜の黄色い色を思い浮かべた。
「黄色いカレーに入れるのかい?」
南瓜を黄色いカレーに入れても色合いが悪いだろうなと思いな
がら聞いた。
「違うわ。赤いカレーよ」
そうだろうな。話はそれだけで、すぐに南瓜のタイカレーのこと
は忘れていた。
「ねぇー、あのお店に寄りましょうよ。南瓜をちょっと買いたいのよ」
「・・・・・」
「南瓜でタイカレーを作るわ」
とうとう来たか。多分、俺の好みではないだろう。俺は覚悟を決め
た。「不味そう」「美味しくないだろうな」と思う料理を食わなくては
いけない時には覚悟がいる。
南瓜はカンボジアから来たから、カンボジアが訛ってカボチャに
なったという説がある。つまり南瓜は南蛮渡来の野菜なんだ。
ヌチャナートは楽しそうに調理を始めた。南瓜の種を取りながら
「南瓜のケーキも美味しいのよ」
「知っているよ。あれも美味しいね」
「日本語ではカボチャっていうのよね。カンプチアのことね」
なんて話しながら手を動かしている。
カンボジアのことをタイ語ではケメーンとかカンプチアと言う。
国の名前は時代によって変わる。
南蛮貿易が盛んだった頃もカンボジアと称していたのだろうか?
だんだん良い臭いがしてきた。
「ねぇー、味見してよ。唐辛子をもっと入れる?」
味見をすると、良い味になっている。
「辛さはちょうど良いよ。唐辛子はいらない」
出された南瓜のタイカレーを食べ始めた。俺はその味に期待し
ていない。一口食って見ると、南瓜の甘味がカレーの辛さを消
す効果があるのが分かった。
カレーが持つ鋭い刺激的な香りを南瓜が消している。
「これはいけるな!この味はいい」
意外な組合せと思ったが、実に相性がいい。
2011/3/9
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