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2011年5月29日 (日)

タンブン

今日はタンブンをやると言われていた。俺も出席すると思われて
いる。と言うより当然出席するものと思われている。
無言の圧力を感じ、出かけるわけにはいかない。

タンブンと言うのは功徳、喜捨、施餓鬼などなどが入り混じった
仏教儀式だ。
場所は日本で言えば村の鎮守の神様が祀られているところだ。
鎮守の神様というのはバラモン教の神様なんだ。
そこへお寺の坊さんが来てタンブンをやる。
大国主命を祀った神社に清水寺の坊さんが来て般若心経を唱え
るようなもので、俺には奇妙な気がするのだがタイ人には何の不
都合もない。

まずはタンブンをやる場所の清掃から始まる。

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料理を置く台、食器も用意された。

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お坊さんがご臨席される場所も整えられた。茣蓙も食器も全て寺
に備えられている。

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女達は料理を作る。

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子供もお手伝いをする。

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お坊さんが到着した。

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坊さんは9人ほど来ると聞いていた。九人の坊さんが来るとなる
と大きな儀式になりそうだと思っていた。男は一生に一度は僧に
ならなくては一人前とみなされない。実際に来た坊さんは学校の
休みを利用して小坊主になった小学生だ。
なんだよ!近所の悪餓鬼坊主かよ!
普段は悪餓鬼なんだが、僧衣を着ていれば尊敬しなくてはいけ
ない。子供も普段は悪餓鬼なのだが、僧の姿になると悪戯はで
きない。また、どんな大人でも僧の姿になった悪餓鬼に敬意を払
う。

僧衣を着た悪餓鬼も朝になるとアルミの鉢を持って托鉢のため
家々を回る。そしてその日の糧の食べ物を貰う。
在家の者にとっては僧に食べ物を差し上げるのだが、僧は乞食だ
が物乞いはしない。捨てられた物を拾って生きるのが僧の道だ。
在家の者は差し上げているのだが、僧は捨てられた物を拾ってい
ると考えるから食べ物を貰っても礼は言わない。
その代わり、経を唱えて食べ物を捨てた人の良き来世を祈る。
ひとたび僧衣をまとうと食い物を貰った悪餓鬼も腹が空いている
にも関わらず礼を言わず、いっちょまえに背筋を伸ばして経文を
唱える。近所の大人は有り難そうに頭を下げている。
建前上は捨てられた食い物を拾っているのだが、食べ物を差し
出すと僧は「ここにいれろ」と無言で鉢の蓋をとるところが面白い。

式が始まると着飾った人々が集まる。日本人はこの姿を見ても
普段着だと思うだろう。これを見て、よそ行きの服を着ていると感じ
るようになるには時間がかかる。

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式場の周囲を白い糸で囲み、ここが聖域であることを示している。
有り難い読経が始まった。

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読経が終わりお坊さんに食事を食べて戴く。
お坊さんが残された食事は有り難い、縁起のよい食事だ。
沢山の食事を用意してある。僧衣を着ていても悪餓鬼の小坊主
はやはり子供だから、子供の好きな料理や菓子も用意してある。
「子供は甘いものやお菓子が好きだから」と言いながら菓子類や
甘い飲み物を用意していた。
俺はタンブンに出席する子供達のための菓子だと思っていた。
悪餓鬼小坊主に差し上げるための菓子だなんて俺は想像して
いなかった。近所の子供より悪餓鬼でも小坊主を大切にするの
が面白い。
手渡しで料理を僧の席まで運ぶ。

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うやうやしく礼をして僧に料理を差し出す。沢山の料理が僧の前
に並べられた。

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食事が済むと僧をお寺にお送りする。

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僧が帰った後で我々の食事となる。
どういうわけか食事の時間になると式に出ていた人数より多くの人
が集まっている。なにしろ食べきれないほどの料理を作ったので、
料理を袋に詰めて持ち帰る人もいる。

食べ終わった食器は子供達が洗う。
屋台の洗い場と同じで一段目で汚れを落とし、二段目がすすぎだ。
それも流水は使わないから洗剤が残っている。
水切りをすれば食器は簡単に乾燥するので、借りてきたお寺に戻
せばいい。

このような備品は全て寺にあると言っても、その全てが村人の寄進
によって購入したものだ。
テントの一部が破れていたのかな?よく覚えていない。
買えばちょっと高い品物だった。
「こんどこれを取り替えなくちゃいけないな」
「そうだなー。でも・・・・・」
「うーん、・・・・・」
金の出所がないし、寄付を集めるのも大変だし・・・・。
二人の男は頭をかかえていた。

タンブンの風習を見るのは面白かったが、無理矢理つきあわさ
れたので疲れた。ヌチャナートは
「今日はタンブンをやってよかったわ」と晴れ晴れとした顔をして
いた。男達は酒を飲み大音量で音楽をかけていた。
それでも俺がいると遠慮して音量をさげているのだ。
タンブンが終わったので俺は町に出かけることにした。
俺が村から出て行くのを知った男達は「わーっ!」と喜び更に音
量をあげた。

2011/5/1

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