するめ売り
チャオプラヤ川に面する綺麗なレストランで涼しい川風に吹かれな
がら食事をしていた。冷たいビールを飲み、川を上下する船を眺め
ながらの食事は楽しい。
観光客を乗せて満艦飾に明かりをつけた船が通る。
カラオケでもやっているのか船から音楽が聞こえてくる。
バンコック都内の騒音はここにはない。
大きな黒い貨物船が通る。
何艘もの艀を繋いだ引船も静かに動いている。
排気ガスと喧騒のバンコックは何処にあるのかと思ってしまう。
水草の塊が流れてくる。
小船がレストランに近づいて来た。
ご夫婦でのし烏賊とするめを売っている。レストランの客に買わな
いかと言うのだ。この点が日本とタイでは違う面白いところだ。
日本のレストランで行商人が店の中に入り、商売をしたらレストラ
ンは商売の邪魔だと言って行商人を追い出す。
タイのレストランでは行商人が店に入り込み宝くじ、ナッツ、キー
ホールダーなど詰まらぬものを売りにくる。
それを店が許している。キーホールダーなど雑貨を売りに来るの
は年寄りが多い。
客はタンブンとして貧しい年寄りの品を買ってあげる。
タイはこうして年寄りの生活を支える社会構造になっている。
川沿いのレストランだから店に近づくには船が一番便利だ。
それでこのご夫婦は船で川沿いのレストランを回っている。
俺たちも買うことにした。
ウエイトレスに金を渡すと、彼女が買って来てくれる。
川には流れがあるから船は流されちゃう。どうやって船を止めて
いたのだろう。小さなコンロでするめを焼いてくれた。
柔らかで美味しいするめだ。
もうこの店では買う客がいない。次の店に向かう準備を始めた。
ご主人は小さな容器で船に溜まった水をかき出していた。
「おいおいやめてくれよ!」この船は浸水しているのだ。
チャオプラヤ川は川幅も広く、水深もあるし流れも早い。
このご夫婦は命がけで商売をしているのだ。思わず苦笑した。
どうぞ何時までもご夫婦仲良くお元気でご活躍ください。
そして新しい船を買ってくださいと願っていた。
2011/5/5
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