再生可能な野菜
小さな大根をヌチャナートは手にして笑いながら話しかける。
「これ、サミイは好きでしょ?」
「ああ、好きだな」
「この大根、辛いのよね」
本当は練馬大根とかなんとか大根と名前があるのだろうが、
俺は辛味大根と覚えている。
辛味大根って奴は硬くて大根おろしを作るのも大変だ。
俺が大根をすりおろしていると、ヌチャナートは「いい香りね」と
喜んでいる。
原発事故以来、再生可能なナニナニという言葉をよく聞くよう
になった。野菜にも再生可能な野菜と不可能な野菜がある。
遺伝学、育種学が発達し、人間に好都合な野菜が作られるよ
うになった。粒が大きく、色艶がよく、病害虫に強い・・・・など
嬉しい特性を持った野菜が作られている。
それらの野菜はF1と言われる交雑種の野菜だ。
人間にとって有り難い特性を持っているが、子孫を残す能力が
ない。
農家は毎年、種苗会社からF1の種を買わなくてはいけない。
種苗会社にとってはこんな有り難い種はない。
それに対して在来種の野菜は一粒の種を残しておけば、来年
その種を蒔けば同じ野菜が出来る。
F1種と違って在来種は再生が可能なのだ。
もし種苗会社が東北にあって、今回の津波で圃場が破壊され
たならF1種の種は手に入らない。
在来種の野菜を作っている農家は少ない。
F1種の野菜しか作っていない日本は食糧危機に陥ってしまう。
今こそ在来種の野菜を大切にしなくてはいけない。
2011/9/12
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