タイ人のスパゲッティ
「今日はスパゲッティを作るわね」
「・・・・・」タイ人にそんなもの作れるわけねぇーだろ!俺は無視した。
今まで洋食屋へヌチャナートを連れて行っても、ヌチャナートはいやいや
飯を食っている。
ヌチャナートはスパゲッティなんてまだ一度も家で作ったことがない。
「美味しいわよ、食べるでしょ?」
俺はタイ人が作り、タイ人が喜んで食べているスパゲッティを思い出した。
その味はパットミーコラートのナンプラを甘いケチャップに取り替えたよ
うな味だった。そんな味のスパゲッティが出てくると想像した。
食わないと言えば喧嘩になる。しぶしぶ「うん」と承諾した。
スパゲッティを作ると言っていたのにベトナム製フォーを茹で出した。
米製麺だからヌチャナートはこれをセンミーとタイ語で呼んでいる。
俺はスパゲッティをやめてセンミーでなにか料理を作るのだと思ってい
た。狐色になったニンニクの薄切りを茹で上げたセンミーとまぜている。
その一方でトマトの水分が多いとか文句を言いながらスパゲッティソー
スを作っている。
「できたわよ」
センミーの上に赤いスパゲッティソースがかかっている。
白く透明なセンミーを黄色いスパゲッティに代えれば見た目は完全に
イタリア人が作るスパゲッティと同じだ。
「よく掻き混ぜて食べてね」
味見をすると、俺が作るスパゲティソースとは違うがこれはこれでまとま
りのある味になっている。パットミーコラートみたいなスパゲティではな
い。この味なら俺も食える。
イタリア人が使うスパイス、ハーブを入れればイタリアの香りができる。
「美味いよ。これってタイ人が食べるかな?」
「そーねぇー、食べると思うわ」
バンコックでイタリア人が経営する店で本格的イタリア料理を食ったが、
そこの客層は外国人か富裕層のタイ人だった。
外国人や金持ちのタイ人の好み、本物のイタリア料理なんて知らない
貧しい田舎のタイ人では味の好みが違う。
田舎のタイ人はパットミーコラートのようなおかしな味をイタリアの味と
思っている。こんな味、香りは異質なものと感じるだろう。
新鮮な味として受け入れるだろうか?
2011/11/12
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