ベーコンと卵焼き
ヌチャナートは俺が体調を崩しているので、俺がタイ料理を食べ
ないと思っているらしい。誰でも病気になったり、体が不調になる
と子供の頃に食べた味、お袋の味、故郷の味なんてものを求め
る。俺が和食を求めているとヌチャナートは考えてこんな卵焼き
を作ってくれた。
どうみても和食に見えないが、ヌチャナートには和食に見えるの
だろう。せっかくのベーコンだ。
ベーコンはカリカリに焼き、卵は目玉焼きにというように英米風
の料理にすれば良いのにと俺は思ってしまう。
アメリカ・ヨーロッパの料理なんてヌチャナートは知らないから、
そんな料理を期待する方が間違っている。
ヌチャナートには和風料理だろうが、俺から見るとちゃんと唐辛
子が入ったタイ風卵焼きになっている。
心をこめて作ってくれた料理だ。ありがたく戴くことにした。
ちょっと話が飛ぶが、米について考えてみた。
日本人の主食は米だ。日本人は米には特別な思い入れがある。
米を神聖視して米には特別な力があると信じている。
タイ人も主食は米だ。タイでは一年に二度も三度も米を収穫でき
る。日本のように年に一度の収穫なら米を大切にするが、タイの
ように年に二度も三度も収穫できると米を雑に扱い、米を神聖視
しないのではないかと感じてしまう。タイの庶民を観察していると、
米は大切な食べ物だからやはりタイ人も米を粗末に扱うことはな
い。米粒を入れた竹筒を振って、米の音を聞かせると病気が治る
なんて日本人は信じていた。
神秘な治癒力が米にはあると日本人は信じている。
俺がベーコン入り卵焼きだけを食い、一緒に出された飯を食わ
ないのを見てヌチャナートが言った。
「ご飯も食べなくちゃ駄目よ!」
「・・・・」食欲が沸かない。
「ご飯を食べると元気になるのよ!」
日本語は生の米は米と言い、炊いた米は飯と言う。
タイ語の場合、生米も飯も同じ言葉でどちらもカオと言う。
ヌチャナートの口振りから判断すると、どうもタイ人も米には病
気を治す力があると考えているらしいことがわかった。
2011/12/16
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント